占星術のお告げでわが子を殺める母親たち

男子選好が社会問題化しているインド。近年のエコー機器の普及に伴って本来法律で禁じられている胎児の性別判断と女の胎児堕胎が急速に広がっているとされている。しかしタミルナードゥ州セイラム地区におけるNGOの調査は、こうした近代的な機器に頼る前の時代の、男児選好、女児忌避に狂奔するインド人たちの姿を露わにしている。

→セイラムの妊婦は占い師の予言に従って堕胎する
→胎児の性別判定のためのエコー機器はこの10年で10倍以上に増加

旦那の元に嫁いだ女性たちは、嫁ぎ先の家族の強いプレッシャーを一身に受ける。なんとしても男の子を産め、という強いプレッシャーだ。そこで彼らが頼るのは占星術師である。一部の占星術師はこの方面に関して熱狂的な支持を集めるらしい。

占星術師は、相談に来る嫁やその家族たちにホロスコープを見ながら何番目の子どもが男の子になるのかを予言するらしい。1番目や2番目なら問題ない。しかし7回目の妊娠でようやく男の子に恵まれるとの予言をもらった25歳の女性は、3人の女の子を出産、4番目に生まれた子はやはり予言通り女の子で、生後9日目に殺害し、その後5,6回目の妊娠では中絶したという。次に子を授かり(7回目の妊娠)、男の子に違いないと期待を寄せていると記事では伝えている。

占星術師の相談料は1回わずか30Rs程度だそうで、Salem People TrustというNGO団体は3年間にわたって32の村を調査し、ほとんど全ての家族がこうした占星術師の元に相談に訪れており、少なくとも333件の中絶と嬰児殺しがあったと報告している。そして「実態はそれ以上あり、ほとんどは占星術師の予言を信じて中絶が行われている」としている。

 

こうしてあからさまに「男の子を生む道具」として母体に負担を掛け、精神的に辛い思いをしながらも、何とか男の子を産み、育てあげた女性たちも、やがてその息子が結婚して嫁を貰えば、その嫁に何とか男の子を産みなさい、とプレッシャーを与える中心的な役割を担う。世代を超えて伝播していくのだ。

ちなみにこのセイラム地区の性別割合については、2011年の国勢調査では2001年よりも大きく改善した(男子1000人に対して女子の人口851人→917人に向上)という。この数字が当局によって操作されていないことを願うばかりだ。

関連エントリー
→三女の悲劇
→インドでは女の子が生まれるとがっかりする
→女児抑制のイメージ