ナクサルの活動、今年は潜行か

内務省は、2011年11月までのナクサルのテロ活動の状況について公表した。それによるとインド国内で1476件のテロ活動が確認され、警察関係者124人を含む513人の命が犠牲になったという。最も死者が多いのはチャッティースガル州、続いてジャルカンド州、マハラシュトラ州、ビハール州、オリッサ州、西ベンガル州と続く。

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西ベンガル州の片田舎の農村で始まった地主の抑圧に対する小作農たちの一揆騒動は、今やインド東岸、中部諸州に勢力を拡大し、その影響地域はRed Corridor(赤の回廊)と呼ばれている。そして元々の発祥地域の西ベンガル州よりも、チャッティースガルやジャルカンド州での活動の方が活発になっており、小作農の地位改善を求めた当初の活動目的も薄れ、専ら爆薬を用いた破壊活動だけが先鋭化している。中央政府、州政府の公的施設(学校の校舎、有線電話の塔、発電所、ウラニウム抗など)や道路、鉄道のレールなどを爆破するのが主な手口だ。

インド政府は軍は投入せず、もっぱら警察を主体とした警護部隊を組織して展開させている。それは実行グループのみならず、これら実行グループに思想的に共感し、さまざまな面で支える農民たちがいるかららしい。力だけで制圧するだけでは根絶不可能ということで、農村部での貧困の改善などといったこともナクサライトへの対抗する戦略の中に組み込まれている。

今年は1728人の活動家を逮捕し、546点の武器を押収し、344人のテロリストが投降に応じたという。特に今年は西ベンガル州で最初に蜂起した最古参幹部の一人を逮捕したこともあり、ややテロリストグループの勢いが削がれたような情勢だという。→内務省のサイトによると、ナクサライトによるテロ活動は2006年以降、1509件(2006)、1565件(2007)、1591件(2008)、2258件(2009)、1995件(2010,11月末時点)となっており、犠牲者(死者)数も678人(2006)、696人(2007)、891人(2008)、1116人(2009)、1214人(2010.11月末時点)と、2009年、2010年がピークとなったものの、11月末時点で1476件、513人の犠牲を記録している今年はかなり抑え込みに成功した格好となっている(ただし12月に入ってからはジャルカンド州で大規模なバンドゥ=ストライキを呼び掛けるなど攻勢を強めており、警官襲撃などで多数の犠牲者が出ている模様)。

警察の組織だった追跡から逃れるように移動を繰り返す彼らは、現在では西部のマハラシュトラ州からグジャラートへ、その勢力範囲を広げようとしていることが公表された。

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下院での一般質問で内務相が明らかにしたもので、逮捕者に対する尋問などにより、マハラシュトラ州の最東部で協力者のリクルートや拠点作りに成功している彼らは、北上してグジャラート州のアーメダバードまで視野に入れているという。もしそのような事態になれば、インド大陸の中ほどをナクサライトの影響範囲がきれいに横断することになる。

一方で西ベンガル州の北東部、インドの東北部にあたるアッサム州、アルナーチャル・プラデーシュ州、マニプール州などで活動する左派系過激派グループと、活動資金の融通や武器や弾薬の入手、提供などで提携を進めているという。特にアルナーチャル・プラデーシュ州は中国との国境紛争を抱える地域だ。こうした左派系過激派の活発化は不気味な想像を掻き立てるものだ。