2012/1/31 ●インド入国まで、コルカタ再び


コルカタの空港を出たのは夕方5時半を回ってからだった。昨年3月に出国するときにこの空港を利用したので雰囲気はわかっていた。


十数年前にカルカッタの空港に到着した際には、タクシーの呼び込みがすごかった。ターミナル出口から出たとたん、ほとんど拉致されそうな勢いでかばんを引っ張られたものだった。プリペイドを買おうがお構いなしで、男でも一人で乗るとどこへ連れて行かれるかわからなかった。空港の外も、ただダートの道があるだけだった。


今は空港もだいぶきれいになって、タクシーやバス乗り場が整備されている。タクシーの乗り入れ規制もあるらしく、客引きなどはほとんどいない。空港の外に出ると、二人ほどのドライバーが声をかけてきたが、NOと一言答えるだけで簡単に引き下がった。


バスが1台止まっているのが見えたので、歩いて行く。Howrah駅まで行くというが、MG Roadというメトロ駅でも止まるというので、乗ってみた。


バスが動き出してはじめて気がついたのだが、さすがに1年ぶりだと何の感慨もなくてちょっと拍子抜けだった。正確に言えば10ヶ月ぶりのコルカタの街だ。どこかにちょっと出かけて久しぶりに帰ってきたような感覚だなあと思っていたら、不思議なことに日本を出たのが遠い昔のことのように感じられた。昨日の昼前に家を出て、夕方関空から飛び立ったのに、日本にいたときの記憶にもやがかかったように実感がともなわない。不思議な感覚だった。

 

 


 

ここまで遠い道のりだった。前日夜11時ごろにクアラルンプールのLCCTに到着し、LCCTのマックで過ごしているうちに、テーブルに突っ伏して寝てしまった。目が覚めると4時半、3時間は寝ていたようだ。気がつくといつのまにか椅子がほとんど乗降客で埋まっていて、みな思い思いに眠っていた。荷物を抱えてトイレに行き、顔を洗ってバス乗り場になんとなく行ってみる。するとKLセントラル行きのバスが止まっていたので乗り込んだ。コルカタ行きの飛行機は15:00発なので、それまでどうやって時間を潰そうか思案していたのだが、結論を出す前に、バスを見つけてしまったので、つい勢いで乗り込んでしまったのだ。激しい雨が窓ガラスをたたいている中、また少しバス中で睡眠をとった。

KLセントラルに到着すると、朝6時になっていてちょうどRapid KLという鉄道が動き出す時間だった。1年前に来たときと券売機が変わっていて戸惑う。タッチパネル式になっていた。自分の前でトークン(回収式のプラスチックのコイン状の切符)を買おうとした白人旅行者も操作方法がわからず、諦めて窓口で買っていた。そこから一駅で行ける安宿の集まるPASAR SENIに行ってみる。料金は1MYRだ。駅前も開発が進んで少しきれいになっていてとまどった。わざわざここまで来たのは、別に宿泊するわけではないのだが、ローカルな場所で食事をしたかったのだ。空港はカフェとハンバーガーばかりでうんざりだった。さすがにまだどこも開いていなく、ひっそりした町を一人荷物を担いで歩く。激しい雨が小降りに変わっていた。

前回インドに行った帰りにクアラルンプール市内で1泊したのだが、正直、マレーシアという国自体には特別興味を惹かれなかったのだが、食事には魅了されてしまった。屋台は安いし、どれも自分の口に合う。往復のバス代を払ってでもまた食べに来たいと思った。

やっと1軒、中華系の食堂が開いているのを見つけ、とにかく中に入る。朝、この手の食堂を見つけると、中華粥を食べたくなるのだが、どうもないらしい。ぱっと見渡した限り見当たらないので、適当に麺を湯がいてるのを指差すと、牛肉のホルモンが入った麺が出てきた。まあ仕方ない。スープはあっさりしている。甘いアイスコーヒーを2杯も頼んで時間を潰したが、飲み終わると所在がなくなり、仕方なく食堂を出る。

時間は7時半になろうとしていたが、まだ真っ暗だ。その中を通勤に向かう人たちがぞろぞろと現れてバスを待っている。少し不思議な光景だった。

24時間営業のマックを見つけたので雨をよけるために入り、コーヒーだけ注文する。ラップトップを開いている人がいたので、自分も開くとここでもフリーwifiだ。メールチェックをしたり本を読んだりしているうちに眠くなり、また少し眠る。起きたら9時半をまわっていたので外に出た。

すっかり明るくなったものの雨が降っている中を歩き回る。プドゥラヤバスターミナルを見に行く。まだ来たことなかったが、安宿の集まるエリアから目と鼻の先でとても近代的なターミナルだった。確かStar Shuttleというバス会社が、深夜2:00ごろまでLCCTからここまでの便を運行している。前回も今回もSky BusでKL セントラルまで行き、そこから電車でPasar seniまで来たのだが、Star Shuttleを利用するほうが断然便利だ。これだったら昨夜のうちに直接ここまで来て、安宿を探せたかもしれない(真夜中だが)。Rapid KLが午後11台で運行をストップするので、昨夜はここでの宿泊を諦めたのだ。

また歩き回り、屋台などを冷やかし、ご飯に甘辛く煮た鶏肉を載せたものや、あっさりしたスープの麺を食べる。名前が一切わからないので注文が難しいが、屋台の人はみな親切で、こちらの意図を汲み取ってくれようとする。

昼ごろにバスでLCCTに向かう。バスの中でまた爆睡。クアラルンプールからコルカタに向かう飛行機の機内は興味深いものがあった。インド人乗客が大半を占めるのだが、とにかく落ち着かない。席に着いたとたん、一斉にあっちの席に座りたいとCAに言い出し始める、シートベルト着用のサインが出ても数人はトイレに立ち始めて注意を受けるなど、大きな幼稚園児たちのようだ。例の真紅のスーツに身を包んだCAたちは、さすがにプロで穏やかな表情を崩さずに応対しているが、フライトの先行きを案じてか眉間に力が入ってるのは見て取れた。

 

飛行機が飛び立つと、家族連れの旅行の帰りなのか、女たち3人くらいが立ち上がって座っている仲間の女性のそばに集まり、通路も占有して5,6人で井戸端会議を始める。それが30分、1時間と続くのだ。何か他愛もないことをさも得意げに話し、皆でわははと口を開けては笑っているように見える。かしましい、とはこういうことを言うのだろう。それを眺めながら、どこの国でも女たちが元気で明るいのは健全な国である証拠なのだと、つくづく思った。

 


 

日本を発ってまだ1日ほどだが、睡眠が細切れになったせいで、随分長く旅しているような感覚に陥ってるのかな、と思いつつコルカタの町並みをバスから眺める。


コルカタは電力供給が安定している街だと思う。ひょっとしたら中心街だけなのかもしれないが、商店の無意味なほどカラフルな電飾看板があちこちで輝き、sonyやnikon、vodafoneなどの外資系進出企業のネオンサインもあちこちで光っている。インド系の通信会社も負けていない。ideaやtataなども人々を洗脳するかのように、通りに一定の間隔で企業広告を掲げている。


MG Roadで降ろしてもらい、メトロでPark Streetまで数駅だった。博物館横を歩きながら、ふと思いついて逆戻りする。サダルストリートに進入すると客引きがうっとうしい。一つ南側の通りからそっと宿に向かおう。案の定客引きに捕まることなく、以前泊まった宿に投宿できた。