2012/2/11 ●チリカ湖へ行く


朝、バスでプリーへ向かう。1時間ちょっとで到着。ここからはチリカ湖へ向かう予定だ。プリーには用事もないのでそのままバスを待つ。チリカ湖は海に開口した湖だ。地図を見ていると半島の先端まで道があり、そこから反対側の半島に向かって点線が描かれている。きっと船が出ているのだろうと思う。チリカ湖は水鳥なども多く見られるというし、地形が複雑なようだ。きっと干潟のようになっていて陸地と水没している部分が潮の満ち引きなどによって変化するのだろう。面白そうだ。

バスが走り出してしばらくたつと、右手に今まで見たことのないような景色が広がっている。内海というか、湖は複雑に水が入りこんでいて、少し盛り上がった陸地が小さな島々のようにまだら模様を描いている。そこに無数の牛や水牛がいて草を食んでいる。すっかり魅せられていた。バスで通り過ぎるのがもったいないような景色だった。

2時間半ほどで半島の先端の集落、Satpadaに到着。細長い棒のような半島の「先っぽ」なので三方が海に囲まれている。ここから少し離れたところでイルカが泳いでいるのが見れるということで、遊覧用の漁船なども出ている。州政府直営の宿泊施設、Yatri Nivasと観光客向けの売店や食堂が何件かあるほか、フェリーの発着場があった。Yatri Nivasにチェックインする。簡素だが、部屋が広くて清潔で気持ちいい。昨日まで泊まっていたコナーラクの廃屋寸前の宿とは大違いでほっとする。これで1泊500Rsなら言うことなしだな、と思った。

宿を出てぶらぶらする。小さなところなので何をするでもない。バススタンドが無闇に広く、観光に来たインド人の乗用車の駐車場と化している。その一角に大きなバニヤン樹があり、その木陰に寝転んで新聞を読んだり、みかんを食べながら本を読んだりする。海のそばなので風がそよそよと吹いて気持ちいい。

やがてすぐそばにエコパークと書いている新設の公園があることに気がつき、行ってみた。とてもきれいに整備されている公園だが、ここもほとんど人がおらず、ベンチに座ると自分専用の公園みたいで贅沢な気分になる。椰子の木がたくさん植えられていて、たわわに実をつけている。一つでも頭の上に落ちてきたら大怪我するなあと思いながら、またここでもベンチに寝転がってしばらく本を読んで過ごす。

日が少し傾いてきたころ、波止場のようにコンクリートが何百メートルか突き出たところがあるので行ってみた。人がいてそこに入るのに1Rs払わないといけないが、誰もいない突端に向かって一人歩いていき、日が傾いたほうを見ると、えもいわれぬほど美しい景色だった。インドにきてこんなに美しい景色をこれまで見たことあるのかな、としばらく呆然としていた。まだ日は少し高いが、雲の向こうに煙ったようにくすぶり、やさしい光を放っている。モノトーンの世界に、やがて夕日になろうとするその日の光が、海の上に一筋だけ赤みがかった色をこちらに向かって落として来ているのだ。遠くで漁船がゆっくりと水の上を横切る。漁師が一人、その船の上で立って舵を切っている影が水面に映っている。突端の先にベンチがあったのでしばらく座って海を眺めていた。観光客を乗せた遊覧ボートが時々波止場に戻ってきてぞろぞろと客を降ろしていく。時間がゆっくりと流れていくのが分かった。入場料たった1Rsで、とても贅沢な時間を過ごすことができた。

チリカ湖に沈む夕日
チリカ湖に沈む夕日