2012/2/14 ●ベンガル湾とチリカ湖の境目


朝、遊覧用のボートに乗ってみた。エンジン付の漁船を1隻チャーターするので結構高い。3時間で1000Rsだ。人数が多ければともかく、一人では少し躊躇するような料金だが、せっかくなので申し込んでみた。ドルフィンウォッチングの後、SEA MOUTHに向かうという。海と湖をつなぐ箇所なのだろう。正直、インドでこの種の船に一人で乗り込むのは男でも不安に思う。岸から離れると無防備になるからだ。船頭は気の良さそうななおじいさんだが、英語は一切話さないようだ。岸から離れてまだわずか数百メートルで一度エンジンを止める。イルカのスポットのようだ。なんだか嘘みたいと思っていると何十メートルか離れた場所でイルカが背中を見せる。船頭のおじいさんは竹の櫂でゆっくりとイルカの方向に向かって船を進める。なんと、竹の櫂を湖面に指すのを見る限り、深さは3mに満たないようだ。こんな浅いところに数頭のイルカがほとんど棲みつくようにいるらしいことに驚く。しばらく湖面をゆらゆらとさまよってイルカたちを見物した後、船のエンジンをかけて走らせる。

途中何度も他の遊覧船とすれ違った。ほぼ全員がインド人の家族連れの観光客だ。刺し網漁というのか、竹竿をいくつも湖底に指して網を張って魚を取るための仕掛けがあちこちにある。砂岸から何百メートルほど離れた刺し網で少年が何か作業しているが、なんと腰までの深さしかない。船から水面を見ても湖底はちっとも見えないが、やはりとても浅いらしい。

竹さおを湖底に刺して網を張る刺し網漁の様子
竹さおを湖底に刺して網を張る刺し網漁の様子

わずかに水面から出た砂州を埋め尽くすように水鳥たちがとまっており、船が近づくと一斉に飛び立つ。よく船底が湖底をこすらないなと思うが、こすったところで砂ばかりだろうから、大してダメージもないのかもしれない。エンジンの先についた羽根さえ傷めなければなんでもいいのだ。

砂岸で時々漁師が投網を行っている。あんなので魚がどれだけ取れるのかな?と思うような気の遠い作業だ。この辺りは岸が非常に複雑に入り組んでいるようで、どこが孤立した島でどこが陸続きなのかちっとも分からない。そんなところでも人がちゃんと住んでいて、家があり、ヒンドゥの立派なお寺があったりする。たとえ地続きでも船で移動したほうが早いのかもしれない。

どこも低い陸地なのに植生は豊かなようで、何の木かはよく分からないが、いろんな種類の木が生えているようだ。ただ、湖岸が潮の満ち引きでえぐられ、樹の根っこが半分露出している奇怪な景色が続いている。それでも枯れることなく木々は青々としている。オディーシャに来て何度も見かけたトキワギョリュウという針葉樹なのだろうが、いったいこういう強い塩分を含んだ水を吸って生きている植物というのは、どういう仕組みになっているのだろう?

湖岸に群生するトキワギョリュウ 根っこが半ば露出している
湖岸に群生するトキワギョリュウ 根っこが半ば露出している

やがて船はSEA MOUTHと呼ばれる箇所に近づいた。長い砂浜が横たわっていて、湖岸に椰子の葉で屋根を葺いた簡易な造りの食堂が何件か並んでいる。なるほど、そういうことなのね、と思いながら船が岸に着くと上陸した。ちょうど昼時だし何が食べられるのか聞くと、洗面器に入った海老を見せられる。これをマサラで味付けして200Rsだという。チャーワル(ご飯)は?と尋ねると、それはないという。なんだ海老だけ食べろというのか、という感じだがせっかくなので注文し、近くの小高い丘に登ってみた。

なるほど、SEA MOUTHの名のとおり、両側から砂岸がせり出していて、ちょうど口が開いたように海と湖の境がつながっている。自分の上陸した陸地は随分広い砂浜になっているが、時期によっては水面に沈むのかもしれない。上から見ると湖面も海水のように青い。

湾曲した半島の先に見えるSea Mouth  左手がチリカ湖、右手がベンガル湾
湾曲した半島の先に見えるSea Mouth 左手がチリカ湖、右手がベンガル湾

火を通したらこんなに小さくなったの?と驚くような海老を食べて船に戻る。船頭のおじいさんにチップとしてあげようと財布に残しておいた200Rsを払う。おじいさんには悪いなと思っていたが、食堂の男からはちゃんとコミッションをもらっていたようなので、気が晴れた。ここで折り返して帰路に着く。帰りにまたイルカのところによってしばらく待つが、今度は現れなかった。

再びチリカ湖に沈む夕日 美しい
再びチリカ湖に沈む夕日 美しい