2012/3/2 ●サンチー到着


今日はボーパール郊外のサンチーへ向けて出発した。サンチーはアショカ王のストゥーパで有名なのだが、正直あまり興味がなかった。ボーパールの宿代が少し高くついたので、静かな田舎町で安い宿を探そうというくらいの気持ちだった。

サンチーには昼ごろ到着した。町というよりも村だった。宿もバスを降りた目の前で見つける。足が痛いのでしばらく部屋でごろごろした。夕方になって食事がてら市場に行ってみた。レモンをいくつか買っていると、老人が声を掛けてきた。観光地でこのようにわざわざ声を掛けてくる人にはろくなのがいない。しばらく無視して歩いていたが、それほど押しの強くない様子で時々話しかけてくる言葉に耳を傾けていると、どうやら私設のガイドのような商売をしているらしい。全くもう、うんざりだ。

しかし、老人が不意にポケットから取り出した写真アルバムにチラッと目をやり、驚いた。昨日ビームベトゥカで見た壁画と同じような絵の写真があったのだ。興味のないふりを装いながらも、そのアルバムを手にとって何枚かの写真を眺める。いずれも動物たちを描いた壁画だ。この近く、徒歩で20分くらいのところにあるんだという。

昨日、ビームベトゥカにあった説明板によると、この辺り一帯の平野部に、おびただしい数の、こうした壁画が描かれた岩が散在していると書かれていた。ただし旅行者が個人で探せるとは思っていなかった。見たい。俄然興味が湧いて来て少しお金を払っても見たいと思い始めていた。

老人によると往復2時間あれば行って帰って来れるよ、という。それ以外に自分の興味を引いたのは、サンチーから数km離れたヴィディーシャという町にあるモスクについてだった。少し前にその中からヒンドゥの神スーリヤを祀っていた寺院の痕跡を示すものが発掘されたことから町が騒然となり、ヒンドゥ教徒とムスリムの間に一気に一触即発のムードが漂う状況になったという。

実はこのサンチーの後に北上する途中でアヨーディヤに立ち寄る予定にしていた。アヨーディヤで起きたヒンドゥ・ムスリムの衝突に至る経緯と良く似た話だ。現在は調査の名の下にインド考古学局が占有していて、何人も入れないようにしているのだという。中に入れなくてもいいので、ぜひそこも見てみたい。

老人に明日自分を壁画とモスクに連れて行くように頼んで別れた。