2012/3/4 ●またもやラクノウまでの長い1日


朝早く宿を出て乗り合いのジープをつかまえた。ヴィディーシャという町まで行く。今日は大移動の日だ。30分ほどでヴィディーシャに到着し、駅まで歩く。途中で男の子に道を尋ねると、日本人が珍しいようでついてきた。さらにその男の子の友達も合流したのだが、生意気なことにスクーターを運転している。別の友達を後ろに乗せている。年を聞くと12歳だという。全く困ったものだ。インドの町を歩いていると、たまに自分のすぐそばを横切るスクーターを運転しているのが、こんな子供だったりする。

ヴィディーシャで出会った12歳の少年
ヴィディーシャで出会った12歳の少年

ヴィディーシャの駅には英語の時刻表がなかった。デーヴァーナガーリー文字を読み解くのは面倒なので、近くのインド人に尋ねると、ラクノウまで行く列車は15:30だと言われた。今はまだ朝9:30だ。別のインド人の青年に尋ねると、時刻表を眺めてやっぱり15:30だと言われる。なんとかもっと早く出る列車はないのかしつこく尋ねると、周りのインド人たちに相談してくれて、10:30に出る列車に乗って途中の駅で降り、別の列車に乗り換えると良いということになった。15:30までここでジッとしているくらいなら、少々ややこしくても先に進んだ方がよい。10:30に来た鈍行列車に乗り、14:30ごろBinaという駅で降りた。ラクノウ行きの急行列車がすぐに見つかり、乗り込んだ。2等車両はえらい混みようだった。トイレの近くに荷物を置き、その上に座る。誰かがトイレを利用するためにドアを開けようとするたびに立ちあがらないといけない。大体分かってきたことは、鈍行列車は意外とすいている。多少混んでいてもローカルなのでみんな2~3駅で降りていくのだ。逆に急行列車は長距離移動が多いので、乗客が途中でちょろちょろと乗ってくる割になかなか降りない。やはりみな目的地は大都市なのだ。

途中で珍しいものを見た。彼らがヒジュラなのだろうか。女装をした20歳代くらいの男たち3人が途中で乗り込んできた。みなサリーを着ている。胸のあたりはみなペタンコだがブラウスを着ている。乗客でごったがえす2等車両を回りながら、客に大袈裟にしなを作って喜捨を求める。日本でいえばタレントのはるな愛のような黄色い声で、「ちょっとあんたお金ちょうだいよ」というような言い回しをしているように聞こえる。決して物乞いのように眉を下げて憐れみを売るわけではない。どちらかというとゲイバーのように客をいじって周りを笑わせ、少しばかりのお金をせびって歩いている。乗客たちも別にあからさまに嫌がるそぶりも見せるわけでなく、どちらかというとまんざらでもない様子でニヤニヤしているのが少し意外に感じられた。自分の目の前に立っていた少女も目を丸くしてそれを眺め、母親と目を合わせてはくすくす笑っていた。

暗くなっても列車はまだ到着しそうにない。ある程度覚悟を決め、いつラクノウに着くかなどあまり考えずに乗車したが、やはり疲れてきた。列車が途中の駅で停まったときにチャイを買うために一度降りてまた戻ると、元座っていた場所は他の乗客に占領され、しかたなしにぎゅうぎゅう詰めの中で立ったままになってしまった。自分の体を支えているのもつらいほど混んでいるのだ。手でつかまるところにさえ事欠いた。どこか駅に到着する度に外を気にする自分に「どこに行くんだ?」と周りのインド人が尋ねるので、「ラクノウ」と答えると「まだまだ先だ。着くのは夜中の1時、2時だよ」と笑われた。

ラクノウに到着したのは夜中の1時半ごろだった。2等でも平気だと思っていたが、さすがにここまで長く感じ、心の底から「疲れた」と感じ、予約を取らずに列車に乗り込んだことを後悔した。

こんな時間に街に出て宿を探すのも気が引けたので、駅のリタイアリングルームに行ってみた。ホームから看板に従って階段を上って行くと女性が二人ほど受付のデスクにいて「予約はあるのか?」と聞いてくる。「いや、ないよ」と答えると「階下で予約するように」と言われてまた下に降りた。General coach(2等席)で、しかも目的地に到着しているのにリタイアリングルームを利用するのも厚かましいかもしれないな、と思いながらホームを歩いて探し回ったがどこで予約できるのか分からない。どこも閉まったままなのだ。だんだん腹が立ってきてホームの端っこに荷物を下ろして座り込んだ。

ヴィディーシャの街角で見かけた子犬たち
ヴィディーシャの街角で見かけた子犬たち