2/24 ●インドの結婚式

ブラジェーシュさんの弟さんの結婚式が夜に開かれる予定。ベナレスに出発する前にブラジェーシュさんのお宅でさまざまな儀式があるというので、お邪魔する。

大きなスピーカーを何台も積んだ車が待機して、こういう結婚式用のために太鼓やラッパなどを持った人たちと女の踊り子さんが音楽と踊りで先導するようなカタチで新郎、つまりブラジェーシュさんの弟さんがスーツに身を包んで村を練り歩く。その後を女たちが、こういう時に歌う歌が決まっているのか、ともかく歌を歌いながらついて歩く。その後を多数の人間がぞろぞろついて歩く。村の各所、どちらかというと外れか境界のようなところで止まってたっぷり時間をかけて何やら激しい音楽と踊りの時間となり、最後は村の入り口となるところまでたどり着く。新郎が乗るらしい車が止まっており、そこでまた長い時間をかけて音楽と踊りが始まる。宙にたくさんの飴が撒かれ、子供たちが必死になって拾い集める。

新郎が出発し、自分たちもそろそろベナレスに向けて出発しようとしたのは昼だった。それから村人数十人も含めて車やバスに分乗してはるばるベナレスへ向かう。途中車が故障するなどトラブルがあり、自分は公用車?のようなアンバサダーに特別に乗せてもらった。これは一体どんな類の車なのか尋ねてみたが、どうもよく理解できなかった。U.P州公認のシールがフロントグラスに張られている。シートに体が沈み込むような心地よさだ。しかもなぜか緊急用のパトライトが上についており、ドライバーはずっとそれを回しながら走る。前に車があると、クラクションの代わりにシフトギアについたボタンを押してサイレンを鳴らし、相手を威嚇するかのように追い越していく。追い越す際に反対側車線から対向車が走ってきてもお構いなしだ。サイレンの音で相手が思わずひるんで速度を落としたところをすかさず追い抜いていく。個人の結婚式なのだが。。。その政府御用達のアンバサダーもベナレス直前でタイヤがパンクするなどし、結局今夜泊まるホテルに着いたのは、夜8時半ごろだった。

自分のような人間は部屋を割り当ててもらった。考えてみると村からは男ばかりで、女性はインドマイトリの会のスタッフの方と所長さんだけだ。村の人はほとんど大部屋で雑魚寝らしい。また、相手方の関係先からも男性が多数来ており、同じ大部屋で布団が敷かれ雑魚寝になるらしい。とにかくプロセスが長い。本番はまだこれからなのだ。新婦がどんな方なのかもまだ見ていない。

荷物を部屋に置いて、しばらくすると結婚式場にこれからみんなで向かうと教えられる。結婚式会場はこのホテルのすぐ近くということだった。新郎のご兄弟のモンクの方(お坊さん、ブラジェーシュさんの別の弟さん)と自分がまたもやアンバサダーに乗せられ、ホテルから50メートルほど離れた会場まで行く。ただ車で走って行くのではないのだ。新郎の車の後に続いて、わずかな速度で練り歩くように進むのだ。その後にほかに参列する村の男性たちがぞろぞろ付いて歩く。新郎の車はいったん会場を通り過ぎて50メートルほど進んだところで止まり、Uターンして会場に向かう。自分たちの車もそれに続き、歩いている男性陣もそれに続く。なんともうやうやしく、長い。

ようやく会場にたどり着くと、そこは驚くばかりの光景だった。披露宴会場というよりキッチンスタジアムみたいな感じだった。さもなくば食の見本市会場のようだった。ちょっとしたスポーツができそうな空間にグリーンのフロアマットが敷き詰められ、両側に見慣れたインド料理、見たことのないインド料理、サラダ、ミターイー(お菓子)、ミネラルウォーターからソフトドリンク、コーヒー、アイスクリームなどのデザートまでずらっと並べられ、サーブしてくれる。みんな食べ放題、飲み放題だ。サーブする横で料理人たちが次から次に料理を作り続けている。真ん中にはカットした野菜や果物が大きなディスプレイのように飾られている。とにかくこれでもか、というほど贅が尽くされていて溜息しか出てこない。

いちばん奥のステージで肝心かなめの結婚の儀式が開かれる。外国人の自分たちの目にも少し変わっているように思われたのは、ヒンドゥーと仏教の折衷のような様式だったからだ。先日のブラジェーシュさんのお宅でのセレモニーと同様に、新郎の御兄弟がお坊さんということで、クシナガラからたくさんのお坊さんをわざわざ招いて儀式を執り行う運びになったようだ。新郎、新婦はマハラジャ、マハラニのような豪奢ないでたちながら神妙な顔つきでお坊さんの唱える文句を聞いている。途中からは参列者が祝福のためにマリーゴールドの花びらを何度となく二人に浴びせる。プロのカメラマンも大きなビデオカメラを抱えて撮影する中、やがて金色のような輝く一本の長い糸をお坊さんたち、新郎、新婦、両家のご家族が全員で輪になるようにして手に持ち、多分、これで両家は末永く強い絆で結ばれることになり、、、というようなことで最後を結んだのだろう。

その後なぜか撮影会のような雰囲気になり、ステージ上に座る新郎新婦の背後に親類縁者の方が立ち、出席者が各々段下で写真を取っている。自分たちもなぜか壇上に呼ばれて写真撮影の対象に。結局この日みんながぞろぞろホテルに帰り始めたのは午前2時を回っていた。長い1日だった。