前に書いた通り、今回シアルダー駅近くのホテルを予め予約したので、またメトロでMG road駅まで戻り、少し遠いがそこから歩いてシアルダー駅近くの宿を探し当てた。
以前にもこの辺りの別の宿に泊まったことがあり、庶民的な雰囲気が満載でとても気に入った。駅前にフライオーバーが交錯していてその高架下には地方からの客を意識したお店や露店がびっしりひしめきあうように軒を連ねている。ここにはなぜかモバイル関連用品とゼロックスコピーの小さな店が立ち並んでいる区域もあって、共和国記念日のせいか一斉に休みだった。
高架に隣接するように、路上に座り込んで野菜を売っている通りがあるが、そばに大規模な卸し市場のようなものがあるようで、トラックが出入りし、大きなかごを頭にのせて運ぶ労働者たちの姿が耐えない。ツーンと鼻を刺すような野菜屑の腐った臭いがいつも充満している。自分はこのローカルな雰囲気がたまらなく好きだ。人混みに身を委ねるように、特に目的もなく辺りをうろうろと歩き回った。
このシアルダー駅に隣接するように、Tangraという地域がある。主にバックワードの人たちが暮らすエリアで、かつては中国系の人々が集まって暮らしていた。彼らはこの混沌としたコルカタ(旧名カルカッタ)で生計を保つためにきっとよく働いたのだろう。ヒンドゥ教徒が忌み嫌う動物の解体や皮革業を興し、彼らが作った春巻きやチョウメンはコルカタのインド人にもよく受け入れられた。羽振りがよくなったTangraには大きな中華料理店がいくつもできたらしい。しかしある時、彼らは行政府から突然郊外への移住を命じられた。
この経緯については詳しくないが、彼らはうまくやり過ぎたのだろう、と邪推している。彼らの成功を妬むインド人たちにより、政治家まで取り込んで追い出されてしまったのだと。
Tangraから多くの中華系住民が出ていったあと、彼らが興した皮革産業は残り、今でもコルカタの主要産業のひとつだ。春巻きやチョウメンの販売もインド人たちに取って変わったが、コルカタのあらゆる街角で気軽なスナックとして売られている。特にチョウメン(焼きそば)は北インド中に広まった。
シアルダー駅でもチョウメンと春巻きの屋台がズラーッと並んでおり、昼間はいつもテーブルに収まらずに立ち食い客まで出るほどの盛況ぶりだ。しかしここから少し離れたTangraの街を歩き、わずかに残る中華街の面影、中国人墓地の入り口を示す漢字表記のさびれた標識などを見るとき、栄枯常衰を感じずにいられないのだ。
夜になって、気になっていた、ホテルの隣にあるATMに行ってみた。昼間から時々覗いているが人が並んででいるわけでもなければ、中でお金を下ろしている様子もない。aPLUSマークもついていないATMに国際キャッシュカードを通して試しに10000ルピー分の預金を下ろしてみると、あっけなく下ろすことができた。なーんだ。
あとでネットで下ろした金額を調べてみると17000円あまりだった。手数料も含まれているので、レートは1Rs当たり1.7円程度だ。クレジットカードによるキャッシングについてはわからないが、何のことはない、これまで通りで問題なかったのだ。逆に外貨の現金を両替すると両替制限がある上に、レートが極端に悪くなる。クアラルンプールとコルカタの空港でわざわざ両替したのは実験のつもりだったが、結果的にはかなりの損だった。